![]() | 2010年8月12日、マレーシアのクランタン州政府は、イスラーム通貨であるディナール金貨とディルハム銀貨の発行を開始した。クランタン州が発行した金貨は重量が4.25グラムとイスラーム標準に準拠している。正式な通貨として州内の1,000カ所の店舗で使用できるほか、喜捨や巡礼基金拠出金などの支払いで使用することができる。 |
![]() |
マレーシアはイニシアティブを
2003年12月、イスラーム・ビジネス会議所のラジャ・モハマド・アブドラ事務局長は、マレーシアはOIC議長国としてディナール使用のイニシアティブをとるべきだと語った。 |
|
アメリカ主導の国際秩序に対する、もう一つのイスラームの挑戦が静かに進行している。それは決してテロといった暴力的な手段ではなく、イスラームの普遍的な理念と構想力によって国際経済システムを変革していこうという平和的な試みである。その第一弾が、貿易取引において金貨を使用しようという構想である。金貨の名称は「ディナール」。すでに、イランがマレーシアとの貿易決済でディナールを使用することを提案したとも報じられている。ディナール普及のための事務局をマレーシアに設置する準備も進行している。
本稿のエッセンスは『週刊エコノミスト』(2003年1月28日号)に掲載されたので、参照していただきたい。 |
![]() |
![]() |
さて、同時多発テロ事件が起こる1カ月ほど前の2001年8月15日、マレーシアのマハティール首相はイエメンを訪問し、貿易決済においてディナールを使用する可能性を探っていると発言した。
では、なぜいま金貨なのか。金本位制の時代は過ぎ去り、もはや金貨でもないはず。だが、この構想は単なるパフォーマンスの域を超えつつある。 |
| ディナール構想の推進者の狙いは、国際経済の秩序、ルールにイスラーム的な価値観を反映させることにある。それには、米ドル依存からの脱却と投機経済の封じ込めが必要となる。これを達成するための起爆剤として構想されたのが、ディナールなのである。ただし、ディナールを各国内の通貨として流通させるのではなく、貿易取引における決済通貨として普及させようというのである。やがて、イスラーム的理念が世界経済を動かす、第二のディナール時代が訪れるのだろうか。 |
![]() |
| 原始的な交換は物々交換だが、それはあまりに不便なので通貨が使用される。しかし、そこに正義がなければ一層大きな問題が起こることをイスラームは指摘していた。すべての存在を神のものと考えるイスラームでは、貨幣の貯蔵、退蔵を厳しく禁じ、喜捨(ザカート)をする義務を定めている。クルアーンには、金や銀を蓄えて施しをしないものには、痛ましい懲罰を告げてやればよいとあるほどである(第9章34─35節)。同時に、イスラームは貨幣自体が富を増大させる手段となることを認めない。これがリバ(利子)の禁止である。だから、労働なく富が増殖するような不労所得は認められない(→[イスラーム経済論関連書])。イスラームは、こうした大前提によってこそ貨幣経済が成り立つと考えている。 |
![]() |
![]() |
マハティール政権下では、イスラーム経済の拡大が進んでおり、すでに、イスラーム金融が国内市場で約22%のシェアに達している。こうしたマハティール首相の姿勢に注目していたのが、スコットランド生まれのシェイク・アブドルカディール(Abdalqadir)氏とスペイン生まれのライス・アブドラ・イブラヒム・バディロ(Rais Ibrahim Vadillo)氏である。
モロッコのイスラーム神秘主義者ムハマッド・アルハビブの弟子でもあるアブドルカディール氏(Firdaus Abdullah,"Malaysia capital of Islam'",New Straits Times (Malaysia),August 1, 2001.)氏は、ドル依存の通貨体制から脱却し、イスラーム通貨の確立を目指してきた。そしてアブドルカディール氏は、投機家を批判するマハティール首相の発言を賞賛し、ディナール使用を推進してくれると信じるようになった。 |
|
バディロ氏はカトリックの家庭に生まれ、自らの意志でイスラームに改宗した人物で、有力イスラーム非営利団体「ムラビィトゥン運動」(Murabitun Movement)代表を務める。
彼はムラビィトゥン運動傘下の世界イスラーム貿易機構(World Islamic Trade Organisation=WITO)を通じて、1992年から私的な「通貨」としてディナールを鋳造しているのである。スペインだけでなく、南アフリカ、アラブ首長国連邦、インドネシアでも鋳造をはじめた。もちろん、公定通貨として各国の承認を得ているわけではないが、現状では装身具と同様の扱いで鋳造できる。ディナール鋳造の準備はできているのである。バディロ氏には、『Return of the Gold Dinar』などディナール構想関連の著作もある。 |
![]() |